鴛鴦呼蝉庵日乗
2005.01.24  時代状況と「場」

 風邪のため寝ていて、その分、頭の回転がかなり低くて、締め切りに遅れています。深夜にがんばろうとしたのですが、寒さと考えられず、結局断念。早く寝ようとしても6:00になるという悪循環です。睡眠時間が1時間でもなんとか生きていけるというのは、今まで何度も経験していますが、だんだん興奮状態になってきます。しかしそれは論理的な創造力ではなく、かなり後退した無駄な時間なのですが、いたしかたないです。

 伊地知ナナコさんより公演の案内。『レイディアンス』1/28〜2/1 麻布die pratze 三人姉妹の物語。出演は、劇団民芸の戸谷友さん、元唐組の櫻井ひとみさん。

 最近のフリーターやひきこもりや、就労意欲の低下には、時代状況が大きく影響していると思います。以前なら、高額な家電などを購入するには、かなりの努力が必要でした。そして、庭付きの家、自家用車。それらも高額でしたが、だんだん大量消費になって価格が安くなったのです。それゆえ高学歴ではなくても、ある程度の収入でテレビや車、家という生活ができるようなったのです。だれでもがテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、その他いろいろなものを購入できるようになりました。金利もそんなに高くはないのです。そういう世の中において、将来の生活のためにがむしゃらにがんばるということはなくなります。ある程度がんばれば十分な生活ができるからです。
  あとは自分の生き甲斐ややりがいです。でも、不景気な時代、リストラもありうるのにそんなにがんばるべきかどうか、ならばある程度がんばってあとは家庭の生活を充実させようと言う気持ちになるのは、当然かも知れません。
  それゆえ、がむしゃらになるよりは、色恋に浸った方が、個人の範囲では充実していくことになります。青少年の性交率が高くなっているのも、平和な証拠ですし、それら文化的になんら不足のない時代だからこそ、恋愛に走るのでしょう。江戸時代に安定してくると、風俗や文化が庶民の手に渡ります。それと同じです。歴史的な要素は、時代状況に比例していると思われます。
  では、これからどのように個人の意識を高めていくか。それが問題です。映画の「釣りバカ日誌」、ドラマの「3年B組金八先生」、そられは見事に時代を映していると思います。そこにヒントがあるではないでしょうか。もっと子どもたちや大人たちの実態を調査し、その向こうに見える将来意識や生活意識から、これから進むべき道を考えるべきです。政治はその点で調査が不足しています。国民が今、何を欲しているか、なのです。
  それゆえ、これからは人間関係によるいろいろ細かな問題が多発すると思います。そのためにコミュニケーションの問題が取り上げられるでしょう。

 やる気が出ないとか、何もしたくないとか、そういう意識がどんどん出てるのが、これからだと思います。だからこそ、いろいろとどんなことでもいいから話していく必要があるでしょう。一歩一歩のコミュニケーション、そこに力点が置かれていきます。そして、もう少し待つと、自治的な動きが出てきます。何も必要のない時に、最低限の活動として、自分の価値を求めていくからです。

 さてそのようになるかは不明ですが、何かしらの動きはどんどん見えてきます。そして政治のあせりがどんどん追い込んでいくことになります。いずれ政治が国民から乖離していくことも見えています。それは世代の乖離と言ってもいいでしょう。
  こういう時代だからこそ、考える時間をもっと設けるべきなのに、知識でまかなおうとするのは間違いです。知識は知識、しかし考える時は考える。その繰り返しなのです。近道はありません。今までの長い歴史の中の動きはそれなりの成果を残してきたのです。そこから発展はあります。あまりあせって小細工をしても、効果はありません。テストしていないのに、小細工をするから失敗するのです。「現代語」などの結果はそのことを示していたのに、教訓として活かさなかった。それは、研究姿勢かが足りなかったのです。

 研究者と政治家と、そして、多くの人と、もっと語り合うためには、場を設定する必要があります。場がなければ、なにもなりません。場こそ、必要な条件です。

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