「発想・思考・表現・語彙」−国語表現、中高での試み−

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98/01/18 (日)作成途中版


平成7年度 全国私立中学高等学校 国語科研修会
主催 財団法人 私学研修福祉会,財団法人 日本私学教育研究所
後援 日本私立中学高等学校連合会
順序 実践報告T
報告日時 平成7年8月1日(火) 午後3時〜4時
報告場所 アルカディア市ヶ谷(私学会館) 東京・市ヶ谷

目  次

■1.報告の主旨
■2.実施の概要
■3.実施の動機
■4.実践形態
 1授業形態[中3]
 2授業形態[高2]
■5.実践例−1発想
 1-1「風桶論−結合の発想力1−」
 1-2「富士山−結合の発想力2−」
 1-3「漢字語句−結合の発想力3−」
 1-4「漢字−結合の発想力4−」
 1-5「伊豆の守の石−反転の発想力1−」
 1-6「エレベーター、−反転の発想力2−」
 1-7「ウルトラマンとドラエモン−反転の発想力−」
 1-8「速攻発想訓練」
 1-9「あなたも経営者−創造力・企画力−」
 1-10「俳句鑑賞」
■5.実践例−2思考
 2-1「国会討論−対立と見解−」
 2-2「ホジショニング法−分類と分析」
 2-3「ヒットの理由−本質と対象−」
 2-4「グルーピング−文章の分類−」
 2-5「故意か過失か−心理判断−」
 2-6「避難か故意か−心理判断−」
 2-7「名誉毀損−公然と人間関係−」
 2-8「速攻左脳問題」
 2-9「速攻右脳問題」
 2-10「死刑制度−主義を主張する−」
 2-11「私服か制服か−対立意見への論破1−」
 2-12「尊厳死は必要か−対立意見への論破2−」
■5.実践例−3表現
 3-1 「名文・悪文ノート」
 3-2「5分間スピーチ」
 3-3「くちの体操」
 3-4「文章音読」
 3-5「MCハマーのフィーリング−比較研究−」
 3-6「実用書式」
 3-7「桜の花びら−観察力と描写力−」
 3-8「ある一日−ノンフィクションの表現−」
 3-9「黒板を爪でひっかく−表現の可能性−」
 3-10「私は怒っている−意見−」
 3-11「お願い!いや!−依頼・ことわり・説得−」
 3-12「吉祥ラブストーリー−ドラマのシナリオ−」
 3-13「表現発表会」
 3-14「思い出は美しすぎて−三年間の思い出の詩作」
■5.実践例−4語彙
 4-1「漢字テスト」
 4-2「語彙テスト」
 4-3「読みを知る」
 4-4「ことば遊び−漢字の穴埋め−」
 4-5「うれしいと楽しい−定義−」
■6.外部コンクール応募
■7.今回の実践で参考にしたBOOKガイド
■8.補足
■9.終わりに


■1.報告の主旨  目次へ

 国語表現能力の育成には、発想力・思考力・表現力・語彙力を重視した展開が必要である。そこで、発想力・思考力・表現力・語彙力を重視し、国語という概念を広げた授業を試みたので、記録を報告する。

■2.実施の概要  目次へ

1実施校  (省略)

2対象

年度 学年 クラス数 生徒数 科目名 単位 総時数
平成3 中3 163 国語表現 28
平成5 高2 50 国語表現 56

■3.実施の動機  目次へ

 実社会では、企画書や報告書などのビジネス文書や公文書、私的な文書も簡潔なものになっている。特に企業内においてはプレゼンテーションに代表されるように、文章のみならずグラフや表が有効に使用されている。最近ではパソコンやワープロの普及により図やグラフ、表は簡単に作成できるようになってきた。また、人事部採用担当者が重視する学生の基本資質は理解力・想像力・発想力である*1。独創的、個性的な若者が減少しているのと声もよく聞かれる。それを解消すべく、全国各地で短作文の実践や音声言語の実践など先駆的な実践が試みられてきた。これらは国語表現の指導方法にまだ多くの開拓の余地が残されていることを示している。そこで、発想力・思考力を重視した授業展開を試みることにした。学習者の個々人の意見が尊重され、自らの創造的な面を認識し、お互いの能力を知り合いながら、新たな興味や探求がなされるような教材の開拓を試みた。発想、思考、表現、語彙と完全に指導内容を分類することは不可能であるが、大まかに次のように分けたものである。
  発想は発想力・創造力に重点を置いたもの。
  思考は論理力に重点を置いたもの。
  表現は書く、話すなどの技法に重点を置いたもの。
  語彙は漢字・語彙力に重点を置いたもの。
 以下の報告はまだ試みの段階であり、いずれ体系的にまとめて実践してみたい。

■4.実践形態  目次へ

1授業形態[中3]  目次へ
  ア 黙想(2分)
  イ 漢字テスト(採点込みで計20分)[隔週]
  ウ 文章音読(5分)
  エ 表現演習
  オ 俳句鑑賞(3分)
    ※最初の時間に生徒に示したプリント

中学3年 国語表現授業の内容
 週1時間なので効率的に進める。そのため課題が多く出る。が、すべて授業のためなので、しっかり学習してほしい。(年間約30時間)

1.用意
 ・ファイル(B5、2穴)
 ・ノート(「名文・悪文」用)
 ・国語活用資料集
2.授業時間
 ・毎回プリントが配られ、それをもとに学習する。
 ・資料集の文章を音読する。
 ・課題をこなす。
 ・テープを聞く。
 ・発表する。
3.漢字テスト
 ・2週間に1回いつものとおりテストを行う。
 ・再テストは90点未満が対象。
 ・ノートは指定された日に提出する。
 ・授業中は漢字のテキストを扱わない。
 ・調べる語句は各自が決めておく。
 ・年間で上位者を表彰する。
4.成績
 ・テストはないが、提出物、授業態度を評価し、読解の点と合体する。
 ・課題未提出は大きく響くので、注意されたい。
5.その他
 ・始業のチャイムが鳴ったら、席に着き、姿勢を正して黙そうして待つこと。
 ・その際、机上は授業の用意をしておくこと。

2授業形態[高2]  目次へ
   ア 黙想(2分)
   イ 語彙テスト(4分)
   ウ スピーチ(3分×2人、6分)
   エ 表現演習

※最初の時間に生徒に示したプリント
高校2年  国語表現(2単位)の目標
 
1.発想力
 考える力をつけるためには、様々なパターンの思考をすることが大切である。そのために、発想力(創造力)育成の訓練として、いくつかの作業を行なう。
2.思考力
 INPUTされた情報を整理し、必要なものを取り入れて、無駄なものを捨てる作業をする。これは、誰かが話したことや書いたこと、世の中の現象をとらえて、理解能力を育成するためである。
3.表現力 
 自分でとてもよい発想や思考をしても、それを誰かに正しく適切に表現できなければ、自己満足に終わってしまう。この授業では、書くことと、話すことによってその能力を育成する。書くことについては、文章で表す場合と、図表をもって表す場合とがある。話す事については、一方的に話すことや、討論などの方法により行なう。
4.語彙力
 全てに関して、語彙を豊富に知ることは、発想や思考、表現の力を伸ばすことになる。そのために、知識を多くすることが必要であり、小テストなどにより育成する。
 以上の4点を中心に、これ以外にもさまざまな知識を豊富にし、あらゆる問題について対処できるように、実社会に出てもすぐに行動できるような常識的な作業も取り入れる。高校2年生として、より高度な能力育成のために、授業もかなり難しいことも行なうが、T類を選んだ諸君には、十分に達成できるものと信じている。また、達成して欲しい。課題が日常的に多いが、それを乗り越えて、がんばって欲しい。
※最初の時間に生徒に示したプリント
高校2年「国語表現」授業の内容
1.小論文作成
 学期に数回、4000字〜8000字程度の論文を課題とする。なお、これらは、外部の懸賞に応募する。日常的には200字〜400字程度の小論文は定期的に提出させることがある。
2.5分間スピーチ
 毎授業始めに5分間のスピーチを課題とする。話す内容や、展開方法などはあらかじめ準備の上、要項を提出する。ポイントはわかりやすい展開、話し方、態度、内容である。評価は全員で行なう。
3.語彙小テスト
 現代語彙の小テストを毎回行なう。1問1点で10問、時間は3分間。7点未満は再テストを行なう。
4.評価
 「国語表現」は中間・期末テストを行なわない。日常の課題を評価にする。
5.黙想
 授業の始まりは、頭を沈静し、脳波にα波を出させるために、黙想をもって行なうこととする。よって、授業のチャイムが鳴ったら自分の席に着いて、姿勢を正しくし、授業の用意を机の上に出し、黙想して待つこと。

■5.実践例−5-1.発想  目次へ

1-1「風桶論−結合の発想力1−」  目次へ

内容)「風が吹けば桶屋がもうかる」を使った発想訓練は、古来よりよく扱われるものである。単純であるが、別々の事象を結合する発想力が鍛えられる。単線で論理構成による結合も必要とされる。発想の大胆さを評価して指導した。
課題プリント)次から次へと結びつける発想力を養う。典型的なものに「風桶論」がある。
1.風が吹くと砂ぼこりが立つ
2.ほこりが目に入って、盲人が増える
3.盲人は三味線を習って流しで生活する
4.三味線の需要が増えて、胴に張る猫の皮が必要になる
5.猫が少なくなるとネズミが増える
6.ネズミが増えると桶をかじるので桶がこわれる
7.桶屋が繁盛する
[風が吹くと桶屋がもうかる](当てにならないこと)
生徒作例)風が吹くと窓がガタガタする→ガタガタとゆう音で赤ちゃんが起きる→赤ちゃんが目を覚ますと泣きはじめる→泣き声を聞いて母親がかけつれると赤ちゃんにミルクを与える→ミルクを与えすぎると肥満になる
[風が吹くと肥満になる]

1-2「富士山−結合の発想力2−」  目次へ

内容)「風桶論」同様に最初と最後の結合の力をみるもの。「風桶論」が単線を扱い、論理構成も必要なのにたいして、途中から枝分かれる複線も可能とした。最初と最後の熟語をまず設定させ、それから途中の単語を連想でつなげていく。単語のイメージによる結合のみなので扱いやすい。
課題プリント)今回は単語で結合させてみる(複線型でもよい)。全体で20語以上使用のこと。
例)富士山→雪→冬→ダイコン
      冬 → おでん
      ↑      ↓
例)富士山→雪→白い→ダイコン
生徒作品例)[完成20語]お茶−老後−ばら色−血−家族−冷たい−冷や奴−柔らかい−もち−正月−決意−ヘアカット−短い−足−おそい−帰り−夜−夕食−ごはん−さんま
[完成語20語]冬−正月−富士山−登山−観光旅行−(a,bへ)
a ポストカード−夕日−赤−トマト−野菜−(cへ)
b おばあちゃん−東京−ディズニーランド−おみやげ−ホテル−(cへ)
c 高級料理−洋食−和食−おふくろの味−みそ汁

1-3「漢字語句−結合の発想力3−」  目次へ

内容)熟語の初めと最後をまず考え、その中をしりとり式に熟語を結合させていく。順番に熟語の構成分析能力を伸ばすもの。語彙の範囲には入るものだが、先を考えないと回すことはできない。授業では10分で行った。最高は完成で29語、未完成で53語だった。
課題プリント)漢字の二字熟語を例のように結合させ、ぐるっと回してみる。(20語以上) ただし、辞書は使わない。造語をしない。固有名詞()を使わない。
例)結合→合体→体力→力点→点画
生徒作例)[完成29語]文体−体力−力点−点描−描写−写真−真実−実検−検定−定価−価格−格言−言葉−葉脈−脈拍−拍手−手話−話法−法人−人名−名人−人間−間隔−隔離−離別−別居−居住−住人−人文−文体
生徒作例)[完成25語]学校−校歌−歌人−人間−間男−男子−子犬−犬猿−猿山−山村−村長−長雨−雨傘−傘下−下手−手相−相談−談話−話手−手形−形状−状態−態度−度数−数学−学校

1-4「漢字−結合の発想力4−」  目次へ

内容)漢字の「へん」と「つくり」でしりとり式に結合させて、単線で漢字の構成分析能力を伸ばすもの。1−3と同じように語彙に属するものではあるが、先を考えないと完成できない。授業では15分で行った。これは 1-3「漢字語句」に比べると難しいものであった。
課題プリント)漢字の「へん」と「つくり」で交互にしてつなげる。(30字以上) ただし、辞書などは使わない。
生徒作例)[完成61字]松−板−返−適−敵−枚−梅−敏−敗−贈−僧−作−昨−晴−清−漁−鯨−涼−派−脈−腸−湯−漢−難−進−遠−猿−独−虹−江−泡−抱−持−侍−例−烈−熱−勢−加−呈−旺−曜−濯−汗−刊−利−積−績−組−宜−安−姓−性−惜−借−伯−迫−近−析−構−講−訟−松
生徒作例)[完成43字]海−池−他−休−林−検−険−阿−河−湯−賜−財−材−村−討−話−活−清−請−訂−打−持−詩−説−悦−悔−梅−格−路−踊−通−遠−園−圓−損−推−誰−詔−招−撤−徹−往−注−海

1-5「伊豆の守の石−反転の発想力1−」
1-6「エレベーター、−反転の発想力2−」  目次へ

内容)どちらも反転の発想力をつけるもので、今までの概念の逆を考えるのである。江崎氏がダイオードの発明の時に不純物をいかに多く入れるかという基本概念で成功した。またファーストフード店でも利益をつけるには値上げを考えるのだが、むしろ値引きした時に大量にさばけて黒字に転じたという。いままでの軌道に乗ったままの考えを逆にして発想するのはいままでの考え方を根本的に再構築する上で重要である。生徒は答えが一つであると、安心する。しかし、複数あるとそれをどう分類してよいのかわからなくなり、不安になる。特に思春期の生徒は曖昧さに対しての好悪の差が激しい。この課題は答えが一つに限らない。その理由を説明しながら、出された答えをそれぞれ生徒に検討させてることで、答えの有益性を考えさせた。これにより問題解決の手法を養うこととした。答えが出る問題を解くのは学生のうちで、社会に出れば答えのでない問題に直面することはいくらでもある。それを乗り切るのには生活能力が必要であり、その一部が発想力や思考力である。これらの教材は多湖輝『発想力』(1985,ごま書房)より使用した。
課題プリント)
「伊豆の守の石」見方を逆にとらえることは新しい発想を生む。考え方を増やす方法として、逆、裏等が使えるのである。(引用文は省略)
(例)アメリカのある食堂
・カフェテリア式
・従来のフォーク、ナイフの置き場を最初から最後に移動する。−不必要なものを取らない−洗いの軽減(水、洗剤)−経費節約
「エレベーター」Aデパートにはエレベーターが2台しかなく、エレベーターホールは搭乗待ちのお客でいつも満員であり、そのために苦情がたえない。そこでその解決策を現実的、非現実的で考える。
生徒作例)
(入力準備中)

1-7「ウルトラマンとドラえもん−反転の発想力−」  目次へ

内容)これは発想よりも思考のものではあるが、反転の発想力の応用として導入した。
 ウルトラマンはこの世代では知っている程度の限界に近いので、違うヒーローを扱ってみるのもよい。ドラえもんについては誰でも知っているので扱いやすい。これらは普段何気なく見ているものが良い面と悪い面とに分けることができるという分析が求められる。そのためには良いものを疑うという発想力が必要である。身近なものを取り上げると生徒の意欲が出てくるようである。
 「自分で考える」方は、自ら題材を考えることが面倒なので時間がかかり、宿題となった。
課題プリント)「ウルトラマンとドラえもん」意味付けを、「正」「反」で行う。次に一つのものを自分で設定して、「正」「反」について考える
生徒作例)
「ウルトラマン」(正)正義の味方。全くのボランティアで何の関係もないのに、地球の人々を助けてくれるいい奴。強い。多少の情は持っている(かわいそうな怪獣は助けてあげる)
「ウルトラマン」(反)ウルトラマン、あなたのココが困りもの。怪獣はイヤですが、あなたの足場を確保するために、ビルや駅や道路が破壊されていきます。海に降りられても、津波が発生することでしょう。地球外での怪獣駆除は不可能なのでしょうか。そして宇宙から来た日とたちを真っ向から拒絶しています。
「ドラえもん」(正)のび太をたすけてくれるいい奴。時に厳しく、のび太をいましめてくれる。結構頼りになる。たくさん道具を持ってて便利。少しぬけているお茶目なところもある。
「ドラえもん」(反)未来から来るなんて間違っている。のび太だけ助けるなんて差別だ。結局のび太は他力本願の人生を歩んでいますね。これでは人間的に成長できません。また、長い連載中、何度も似たような事件が起きているにもかかわらず、その都度道具が違うというのは、無駄づかいというものです。足りぬ足りぬは工夫が足りぬと申します。工夫をし、少ない道具でなんとかすべきです。
「夏の甲子園」(正)青春、高校生しかできない。高校球児の目標。厳しい練習のつらさを忘れる時。さわやか、感動する。若者がこのときだけはいい印象を持たれる。夏の一大イベント。テレビに出られる。男の涙も許せる。男らしい。スポーツのよさを知らせる時。学校名を売り出せる。
「夏の甲子園」(反)女が出られない。女は女子マネとして裏の仕事ばかりやらされる。甲子園のためなら学校側は何でもゆるす。例えば野球部に限り朝練の規制、学習の成績、下校時間などに文句を言わせない。高校球児にさわやかさ、真面目さ素直さを求める。暴力などを起こすと出場できないので神聖化しすぎている。甲子園の為にスポーツの楽しさを忘れ以上に厳しい練習をさせる。甲子園に行けない学校はかわいそう。地区によって行きやすさに差が出る。ピッチャーが1人位しかいないので素質のある人もひじをこわす。ちやほやしすぎる。朝鮮人学校、アメリカンスクールなどが出場できないので平等でない。推薦で進学したり、プロになる人はいいがそれほど野球の上手でない人は受験勉強ができなくてこまる。社会に出てからスポーツ少年、甲子園の肩書きは通用しない。
ウルトラマン(C)円谷プロ、ドラえもん(C)藤子不二雄,小学館

1-8「速攻発想訓練」  目次へ

内容)風桶論の延長になるが、板坂元氏の著書にアメリカの大学で創造力開発のためにつかわれているものである。今回は板坂元『日本人の論理構造』(1971,講談社現代新書)より使用した。
課題プリント)短時間(1分ぐらい)で集中して大胆な答えを出す。
「6大学野球で東京大学を優勝させる方法」
「ゾウを冷蔵庫に入れる方法」
「もし太陽の光が固体だったらどうなるか」
生徒作例)(入力準備中)

1-9「あなたも経営者−創造力・企画力−」  目次へ

内容)実際に店を経営することは発想力を十分に発揮しないと難しいものである。もちろん国語表現能力以外に、商業知識、法律、経済などさまざまな要因が必要である。ここでは企画力と創造力を伸ばすために、様々な店を観察し、実際に聞き取り調査を行い、さまざまな企業に電話をさせて一部マーケティングの考えを導入した。今回は収支も考えるようにさせたが、実際には難しく計算も適当であった。だからといって収支を除くと、無鉄砲なものになりやすい。現実の中でどのように意識を開拓することは目標の一つであった。また、企画書の形式も簡潔でわかりやすいプレゼンテーションの意識を導入しようとしたが、時間不足で徹底できなかった。今回は高2で行った。これは、中3のときに「比較研究」をし、一部の生徒はある程度慣れていると思ったからである。この授業はのべ8時間かかり、生徒の方でもグループで行ったため、苦労が多かったが、できあがった企画書を見る限り、今後もバリエーションを変えて実施すべきだと考える。ただし、学年を変える場合は、要素を変更して行うことが必要である。地域と密着 したものや、あるいは別の都市での場合なども面白い。
課題プリント)
「1枚目」
目的 架空の店の経営を考えることで、創造力をつける。また、企画書をまとめることで表現力をつける。
方法 下記の土地(架空の駅、「東吉祥寺駅」南で裏道にあり、東北の角地。76.4平方メートル、23.13坪、北は5m、東は4.5m道路。角は2.5mの隅切がある更地)に飲食店(食品販売でも可)を建て、営業することにする。
 1.詳しい店の内容(販売するもの)
 2.店の間取、装飾、外装、看板
 3.従業員数、賃金
 4.光熱費、人件費
 5.収支(販売価格など)
 6.店に来る人の層の調査、利益
 7.具体的経営
以上をまとめて企画書を作成する。
作成 グループ。
発表 10分位で行う。
「2枚目」
実際に企画書作りに入る。1わかりやすく 2図やグラフを使い 3可決に 4説得力があるもの
「3枚目」企画書の書き方
B5判たて置き、横書き。
みやすく、文章は少なく、図や表を入れる。
  • 表紙(「企画書」、日付、班員)
  • 本文
    • コンセプト(基本構想)
      • 立地条件、人々の流れ、社会のニーズ、どういう人々をターゲットに絞ったか など。
    • 業種形態
      • 何を売るのか。
    • 店名
      • 店の名前、看板に書くロゴやマークなども。
    • 商品
      • 細かい商品の内容、価格、仕入れの説明
    • 図面
      • 平面図、立面図、透視図
    • 詳細、装飾
      • 食器などの細かい所の配置や装飾。
    • 従業員
      • 1人は自分。専業、パート、アルバイトの人数。
    • 収支
      • 商品の仕入れ値、材料費、売価、一日いくら売るのか、一ヶ月の売り上げ、人件費、光熱費 などを予想で。
    • オープンイベント
      • チラシ、オープニングセール、広告方法(新聞、チラシ、立て看板など)
  • 資料
生徒作例)どんぶりめしの おどんちゃん
店名 おどんちゃん
業種 飲食店
ターゲット 工場労働者、高校生
ポイント 社員食堂(学食)に対抗できるような内容を
コンセプト 毎日でもあきないボリュームのあるものを 早く、安く、美味しく
毎日でもあきないボリュームのあるものを、早く!安く!美味しく
毎日でもあきない ボリュームのあるもの
豊富なバリエーションが可能なもの
主役は米
早く
ごはん+α=どんぶりめし
・商品の内容が、ごはんの上に何かをのせるもの、いわゆるどんぶりめしである。
『どんぶりめし』というのは口語であるが、インパクトがやわかりやすさ、また、その語感のよさなどから、店名に用いることにした。
・インパクトがあり、親しみやすく、おぼえやすい名前、ということから、『どんぶりめし』のどんに『○○ちゃん』の『ちゃん』をつけ、『おどんちゃん』とした。
商品の仕入れ値 市価の6割(野菜は季節による)
材料費 例)ビーフカレー1人前およそ 277円
売価 例)ビーフカレー 380円
利益 1人前につき36%を目安とする。
1ヶ月の売り上げ 380円×400食×30日=4,560,000円
1ヶ月の利益 4,560,000円×0.36=1,641,600円
光熱費 1ヶ月 40,000円
ガス代 1ヶ月 20,000円
食器類 コップ 1コ ???円×100
おわん 1つ 273円×100
わりばし 1膳 8.50円×2,500
どんぶり 1コ 527円×100
カレー皿 1枚 670円×100
価格 商品 価格
ビーフカレー 380円
チキンカレー 380円
天丼 530円
カツ丼 380円
牛丼 380円
親子丼 380円
みそ汁 50円
しば漬、紅しょうが、らっきょう、福神漬

宣伝・オープニング企画
立て看板 店舗周辺地に設置。
 目的:周辺の方々の意識を向けさせる。
チラシ 店舗周辺地の新聞の朝刊(6紙)に折り込む
 目的:周辺の方々に詳しい内容を知らせる。周辺の方々の意識を向けさせる。
オープニングイベント 1.オープニング記念価格 200円(天丼300円)
 目的:お客様の興味を引く。気軽に多くの人に来てもらうい、「おどんちゃん」の味をしってもらう。
2.割引券の配布 どんぶりめしが1枚につき20%割引になるもの。
 目的:「おどんちゃん」を覚えてもらい、2度以上の来客を願う。
講評プリント)10班 おどんちゃん 店のプランは木をいれたりして、凝らしてある。オープニングやチラシ、アルバイトのスケジュールに凝っている。ただ、収支書が不足してる点と、ターゲットを高校生に絞ると、夏休みなどは利益が薄くなる。地元との両立も考えたい。
総評プリント)今回の企画の目的は、創造力と企画力の育成を目指した。具体的には、どのような店が可能かのマーケティングをし、そのために情報収集して、さらに利用者の購買意欲を高める工夫をするのが目的だった。実際の社会では、営業力が必要になってくる。そのための最初の基本であるから、企画書を書くことの能力をグループによりお互いに育成させることを重点にした。 まず、この図面の限定された条件の中で考えなければならないことは、商店街から離れていることである。このことから、利用者は地元地域住民の固定客が想定できる。工場利用者のことを考えると、帰宅時には駅より遠回りになる。それほどの魅力がなければ駅のそばを利有するでろう。たいがい、帰宅時は駅に近い方が何かと便利だからである。高校があるが、利用時間は下校時なので3〜6時くらいに限定できる。そして、それは集団が多い。しかし、休み期間(日曜、長期休み)は利用しないであろう。そう考えると地元住民がリピーターとなるような企画が必要である。まずこのことについて考える必要があった。そのためには、飽きのこない味と店の装飾が必要であり、派手す ぎるものや、突飛すぎるものは敬遠されてしまう。なおかつ、住宅地に近いと油を大量に使用したり、煙が大量に排出される店は評判が悪くなる。もし、販売店でなんく、食堂形式をとるなら、出前の原則がないと、特に土曜日曜の利用者は減ってしまう。夏場は家庭で調理するのを面倒に思い、出前にしてしまう家庭が東京ではここ3年前位から増えているからである。また、利益は開店時までの支度費用を今回は計算しないことであったが、実際に計算すると月700万以上の売り上げ、月150万の利益は欲しいところである。以上の様々な点をふまえた企画が望ましいのであった。
 実際の企画書を見て、率直な感想は、予想を超えた出来であった。それは様々な店や会社、問屋を取材した結果に表れている。実際に営業してみても大丈夫と思う店もあった。店の図面や販売内容は詳しく調べてあり、またコンセプトもはっきりしていた。また、ロゴを使ったり、ネーミングは豊かであった。しかし、実際に営業するには収支書が必要であり、その点の見込みもしっかりと調査すべき余地も残されている。企画書の見やすさを考えると文字を強調したり、図を用いたりすることが必要となるが、多くの班では、見やすく分かりやすくまとめていた。れは、レポートにもいえるのである。多くの枚数を費やすより、わかりやすく要点をまとめたレポートの方がいいのである。以前は報告書というと100ページ位の大冊のものを意味したが、最近は見やすい20ページ以内のものでないと報告書としては不完全という風潮が企業内で高まっている。これは、見やすさ分かりやすさに重点を置いたプレゼンテーションの考え方からきている。最近ではプレゼンテーションの本も多数出ている。これからは短い時間でいかに相手に訴えるかという訴求力があるか否かが問われてくる。これは、小論文 も同様で、1000〜4000字程度の文章でいかに自分の主張を訴えるか、その力が書く力なのである。

1-10「俳句鑑賞」  目次へ

内容)ナレーターで有名な中西龍さんがDJをしていたNHKラジオ「日本のメロディー」では、番組の最後に俳句を紹介し、それに中西さん自身が物語をつくり朗読していた。そのテープを録音し、流して、生徒にも物語を考えさせた。テープを使うことについてはNHKに承諾を得た。また、中西龍さんの著書を参考にした。この授業展開はいくつか考えられる。
1生徒が物語りを作ってからテープを聞く方法
2テープを聞いてから物語りを作る方法
3最初はテープを聞いて、しばらくしてから聞かないで物語りを作る方法
 今回は中3対象で、物語を作ることも苦手な生徒もいるので、テープを聞いて、その要点をつかみ、それに加える形で物語をつくる発想力を育成しようとした。
 この授業展開は以前から考えていたもので、応用として古典和歌を使い「古典和歌物語」を作成したりなど、展開は考えられる。5分ほどでできるので、短い時間の使用としては有効である。毎回、独創的なものを生徒に配布して紹介した。物語世界を築く上で、俳句などの韻文を親しむのも役立つものと思われる。残念ながら中西さんは体調を崩して「日本のメロディー」を途中番組を降りてしまったが、その後任としては加賀美さんが担当し、詩を朗読していた。
課題プリント)
丸めても開く紙くず夏はじめ                     
季節 季語 物語を作る
時間 場所
素材(情景)
・紙くず
・丸めて
・開く
生徒作例)つぎのつぎのつぎのつぎだ。数えているうちに、自分の番が来た。見てみると29点!うそ〜!30点はいくと思ってたのに...。私の苦手科目の理科。今回はいつもの倍以上がんばった。それなのに29点。私はその答案を見ているうちに腹が立ってきた。私はテストをつかんだと思うと、きしゃきしゃにつぶしてほうりなげてやった。すると窓から風が入ってきて、そのくしゃくしゃのテストに吹き付けた。テストはどんどん転がって、壁の所で止まった。風はなおも吹き付けた。すると、テストが少し開いて、29点のところがあからさまに出た。私は今度は破ってやろうかと思ったが、その風が私のかっかときた頭を鎮めてくれたので、あやうくふみとどまった。

■5.実践例−5-2.思考  目次へ

2-1「国会討論−対立と見解−」  目次へ

内容)論理力養成のためには、議論の展開を分析する必要がある。国会の質疑応答はあらかじめ質問が政府側に伝わり、事務官などが模範答案を作成し、それを読むだけになっている場合が多い。しかし、よく聞くと質問に対する答えになっていないことがある。今回は、新聞の質疑要旨よりお互いの争点は何であるかのかをまとめる力を養うために、質疑答弁をまとめさせた。この作業は1時間近くかかったが、ある程度生徒には苦労しながら取り組める歯応えのある内容も必要であった。ちょうどその頃、「現代社会演習」の授業でも選挙制度のことに触れていて、教員同志は連絡をとらなかったが、生徒の知識は関連していた。できれば国会答弁のビデオを見せて、質疑の矛盾などについてはも発見させるとよいのだが、政治色がからみやすく、導入は慎重に考えている。。政治関係を取り扱うときは、得に目的を明らかにし、特定の政治家・政党に偏るものでないことを説明することが必要である。添削はせず、生徒同志のを見て、互いに理解することにとどめた。
課題プリント)国会では13日から政治改革関連法案が審議され、新選挙制度で激しい意見の応酬が展開された。そこで、質疑の要点をまとめ、見解の相違を読み取りたい。
[作業]
1.質疑の要点をまとめる。
2.見解の相違をまとめる。
3.大きな論点(中心となる論点)をまとめる。
[注意]
・どちらが正しいか、どの政党がよいかという結論を書かないこと。
・討論の方法や質疑の方法についてのみ理解しておくこと。
生徒作例)
併用比例代表制 単純小選挙区制
・今までより3〜5倍大きな選挙区となり競争相手も増え、もっと金がかかる。
・超過議席が発生したりする。
・小党の分立をうながし、政権の統治機能を骨抜きにし、連立政権となてね責任が不明確となる。
・30%の議席で90%の議席がとれるという国民の民意と違う国会をつくることになる。
・政権独占を永続化させる。
・小選挙区で狭い選挙区から選出される議員は国民の代表ではなく、地域代表にすぎない。
疑問批判
・有権者が政党に対する支持率が議席に正確に反映する。
・小選挙区制も併用しているので超過議席はほとんどない。
・責任有る政権をつくる制度だ。
・少数派を少数派としてとどめるのではなく、さまざまな意見を統合して多数派にり競い合える。
答弁
・民意が正確に議席に反映し、政権交代がおきやすく、新しい政治体制ができる。 ・さまざまな意見を統合して多数派になることを競うことで、実の伯仲した政権交代のおきやすい制度となる。
・責任ある政権をつくることができる。
見解の相違

2-2「ホジショニング法−分類と分析」  目次へ

内容)論理力とは分類力に近いものがある。特に受験でいえばテストの択一問題は正解の選択肢と誤答の選択肢と分類できるかどうかにかかっている。しかし、物事がすべて正反ものではない。そこで、ポジショニングにより、位置関係を示すことで分類できる。おりしもTVでも扱われ、近年この方法が取られている。そこで、自ら分析できる力の育成を目的とした。
課題プリント)4分割した平面に置いていき、すき間をねらって商品開発研究する方法。
生徒作例)
[ポジショニング](実際には列挙ではなく、マトリックスの中に座標として記入)
さわやか
シリアス ・午後の紅茶(MJフォックス)
・JO(江口洋介)
・ポカリスエット(一色さえ)
・ウーロン茶(中井貴一)
・ペプシ(Mジャクソン)
・三ツ矢サイダー(女の子)
・サントリー烏龍茶(中国のカップル)
・SUNFESTA(男の子)
・のものも(カバの親子)
・BOSS(矢沢栄吉)
・キリンレモンセレクト(男の子)
・ピコー(女の子)
・デカビタ(カズ)
ユーモア
・アサヒ烏龍茶(石坂こうじ)
・コカコーラ(ローラースケートのお兄さん)
・愛媛のポンジュース(レースクイーンのお姉さん)
・南アルプス天然水(女の子と教師)
・六甲のおいしい水(渡瀬恒彦)
・アセロラドリンク(陣内孝則)
・泡仕立て(唐沢寿明)
・ポッカ缶コーヒー(柴田恭平)
・ジャワティーストレート(田中律子)
・カルピスウォーター(後藤久美子)
・UCC缶コーヒー(菊池桃子、所ジョージ)
・BLENDY(バッドマン)
・バヤリースオレンジ(ウッチャン、ナンチャン)
・伊藤園緑茶
こてこて
[対象]飲料のCM
[分析]
商品の内容(コーヒーとかスポーツ飲料とか)とCMは全然関係ないということがわかった!
ミネラルウォーターという一見さわやかそうなCMは実はとんでもなくこてこてだし。
CMヒットが商品ヒットにつながるのは当然だけど、CMでヒットを生むにはどうしたらいいか。
これはあくまで、私が思ったことですが、まずCMにストーリー性をもたせるのがいいと思う。ユーモアでもシリアスでも、「作品」として仕上げることではないかなぁ。商品のみを前面に押し出したCMは面白味がないし、あんまり商品を買いたいと思わなくなってしまう。私はどっちかというとCMやパッケージ(?)で気に入ったもんを買ってしまいます。コーヒーならUCCやポッカよりBOSSだし、NESCAFEだしなぁ。
各商品名は各商品の発売会社の商標、および登録商標です。

2-3「ヒットの理由−本質と対象−」  目次へ 

内容)「ウルトラマンとドラエモン」と「ポジショニング」の延長で、TV番組でヒットの要因についてまず考えさせ、次に自分で考えてみることにした。分析力について、本質とそれを享受する人々との関係について理解できることを目的とした。
課題プリント)ヒットするには、a.素材(テーマ)、b.表現力、c.受け手の意識 が関連している。
(例)水戸黄門・・・a.勧善懲悪・世代を越えた非血縁関係の交流、b.格闘シーン、笑いと緊張、c.核家族、都会化
テレビドラマを例にヒットの理由を自分なりに分析してみよう。(ポジションニングを思い出しながら)
生徒作例)

2-4「グルーピング−文章の分類−」  目次へ

内容)「ポジショニング」の延長で文章の分類について検討させたもの。今回は進学関係の行事で卒業生を呼び、大学での話しなどをしてもらうことになっていて、どのような人を招きたいか、どのような話を聞きたいかなどのアンケートをし、その結果を集計することにした。生徒は自らが書いたアンケートを集計することで、身近なものに感じたようだった。集計の際、どのような基準で分類するかが鍵となる。題材を集めにくいので今後の実施は難しいが、生徒の身近な材料があればよい。
課題プリント)
生徒作例)

2-5「故意か過失か−心理判断−」
2-6「避難か故意か−心理判断−」
2-7「名誉毀損−公然と人間関係−」  目次へ

内容)文章にある背後を推理することは論理的思考の材料になる。特に裁判の判例は表面が冷静であるので、その奥に潜むものへの想像は広がる。そこで刑事事件を使い、推論の力を養うことにした。教材は別役実氏の『現代犯罪図鑑』(岩波書店)を使用した。
課題プリント)
生徒作成)

2-8「速攻左脳問題」
2-9「速攻右脳問題」  目次へ

内容)知能検査の問題を扱うことで分析力や論理力を育成する。最近では入試でもSPI検査を導入している大学があるのでそれにも対応すべく導入した。知能を計る知能検査は逆に使うことで能力開発にもなる。しかし、その場合はむやみに使用せず、検査目的や有効性などの十分な検討が必要である。今回は東京図書の「IQ」関係図書を利用した。
課題プリント)
生徒作例)

2-10「死刑制度−主義を主張する−」
2-11「私服か制服か−対立意見への論破1−」
2-12「尊厳死は必要か−対立意見への論破2−」  目次へ

内容)ディベートのための前段階として導入した。ディベートは本格的になると準備に時間がかかり2単位では1つの学期を費やしてしまうほどである。そこで、きちんとしたディベートを実施したあと、ミニディベートと称して、その場で抽選でメンバーを決め、その後でフロアーからテーマを設定してもらい、3分で用意、15分で討論終了するようにしたところ、好評であった。
課題プリント)
生徒作例)

■5.実践例−5-3.表現  目次へ

3-1「名文・悪文ノート」  目次へ

内容)表現力をつけるために身近な表現を探し、発見し、言語への興味を持つ。 また、それを自分で評価することで、自分の評価主体を確認する。そして、自分で表現を書写することで、自分のノートを作成することに興味を持ち、自らが学習する態度を身に付ける。
点検 
2週間おきに回収に検印を押す。コメントについてはいやがる生徒もいるので個々に対応した。ただ、目に見える評価として収集の努力をしたかどうかを基準に○や◎、感想の努力によって「よい」などとコメントをつけた。
評価 
提出点を評価した。内容は個人により差があり特別の場合以外は考慮しなかった。内容と提出状況は比較的比例していた。
反映
1いくつかのものはプリントして配布した。それにより、友達がどのように 収集に努力しているかが分かった。
2年間を通じて一番よい表現を選び「年間MVS」として冊子を作成した。
感想 
生徒によっては好きな歌手の歌詞だけになったり、ある詩集より選んだり、すべて日常会話になったりするが、それ中でも自分の心に残るものがあれば、表現採集の効果はあったと考える。また、会話などの表現をノートに記録することで、「視写」または「聴写」することになる。文字言語を写すのみらなず、音声言語を文字化することも言語生活能力育成の一部となる。

 自分の表現を書き記すことは、その時の自分の価値観を残すこととなる。つまり、自分の心を写す鏡となるのである。もちろん、日記と違い、教員あるいは友達が読むという第三者を意識してのものであるが、それこそ、重要なものと考える。
 この試みは3年間連続して行ったが、ノートの大きさ、縦・横書き、筆記用具の種類・色などは自由にしたので、各自工夫してノート作成していた。毎日書くことはとても苦痛であるが、むしろ収集した成果が明らかに目に見える形で残るので、努力成果を確認することにも役立つものと考える。
課題プリント)
目的
 表現力をつけるために身近な表現を探し、発見し、言語への興味を持つ。 また、それを自分で評価することで、自分の評価主体を確認する。そして、自分で表現を書写することで、自分のノートを作成することに興味を持ち、自らが学習する態度を身に付ける。
方法 
1発見
 日常生活の中で、あらゆる表現を探し、発見する。本や雑誌などの文字言語や、テレビやラジオ、音楽、会話などの音声言語の中から自由に選ぶ。たとえば、歌詞でも電車の中の広告でもかまわない。但し、日本語のものとし、外国語の場合は日本語訳をつける。
2評価・感想
 自分でいいと思うか、よくないと思うか判断する。評価は○×を基準とするが、どちらとも言えないものについてはあいまいな評価のままとする。そして、なぜその評価をしたかの理由や感想などを書いておく。
3記録
 ノートを一冊用意し、そのに毎日一つずつ表現を書き写す。項目は、通し番号、日付、評価(○×など)、表現、出典、感想。
 例)199) 4/25 ○退屈が大切なんだよ。退屈にしときゃ子供は自然に退屈でない方法を見付けるのだよ。曽野綾子『次郎物語』(このごろ退屈という時間をすごす子供が少ないと思うし、私もその一人のように思う)
 毎月の中からとてもよいと思ったものはノートの表紙裏か最後に抜き出しておき、「月間MVS」として記録しておく。
期間
4月15日(木)より始める。試験1週間前から試験後までと、夏休み冬休みは任意とする。
提出
指定した日に提出すること。
評価
学期ごとに平常点として提出状況、努力状況を評価に組み入れる。
発表
書いたものは、授業などで紹介することがある。
生徒作例)「名文悪文ノート月間MVS」より
○「他人の仕事が良く見えるのは、その苦しみをしらないからである」福沢諭吉
 私もときどき、宿題もテストも無く会社から帰ってきたら、ただ寝ればよい父がうらやましく思えるけど、父にしてみれば自分のことだけやって失敗はゆるされて、責任はついてまわらず、夏休みが長く、4時30分に家に帰れる私がうらやましいらしい。
○「素直な君ほど愛される」西田天香
 素直じゃなくたって愛されたぞー。
○私「疲れてる人ってよく笑うんだって」、母「うそよ」、私「なんで?」、母「だってあなた、いつも笑っているじゃない」、私「・」母と娘の会話より
 母にまで言われるとは思っていませんでした。
○「ねえ、見て見て Fumiya ね。運動方程式(F=ma)が名前に入っているんだよ」友人
 物理の授業で運動方程式を習いたてのころ、チェッカーズが好きな友達がこう言ったのです。その周辺の人たちはみんな大笑いをしてしまいました。きっと、運動方程式をもう忘れることができないだろうとおもいます。
○「一生懸命な命の側にはいつも死があり、適当な命の側には堕落がある。」畑正憲
 すごい重みのある言葉だと思う。頭にガンッと来た。
○「もっとずっと前にあんたに会っていれば俺の人生変わっていただろうな。」ドラマ『引っ越せますか』
もし〜だったらこうなったのになぁ、なんて思うのはしょっちゅうですね。
○「だって親友なんだから仕方ないじゃん。」Fさん
「たくさんお友達が来てるのねぇ」というFの叔母さんにFが答えた言葉(電車の中。空港でサヨナラをする時の「平気だよ」という顔をつくっているFの顔を私はきっと一生忘れないだろう。今にも泣きだしそうなのに、自分で「泣くなF!」と言い聞かせているみたいだった。だから私もここで泣いちゃだめだよと何度も目をつむって涙をおくりかえした。誰もが同じ事を思っていた。Fさんの両親も見送りに来た4人の親友(私もちゃっかりふくんで)も。誰もが今にも出てしまいそうな淋しさの涙をおくりかえした。さっさとFはエスカレーターをふりむきもせず歩いて行く。エスカレーターをおりて歩いて行こうとしたFをFのお父さんが「ほら、F、みんなにお礼しなさい」と叫んだ。ふりかえったFの目には、さっきよりたくさんの涙が今にもこぼれそうにあふれていた。そして手をふって消えていた。
 食事の時、Fのお母さんは「明日、学校に行ったら、Fは死んじゃったよってみんなに言っておいて頂だい」と言っていた。お父さんはFに最後に「1年かえってくんなよ」と言った。私は私で「人のひざかくなよ」なんて言った。
 みんな気持ちは同じ「本当は行って欲しくない。でもFさんの夢を応援しているよ」大切な言葉を言わなくても、彼女から「ありがとう」という気持ちが私たちに伝わったように、彼女にも伝わっているだろう。
 今日は彼女にとって新しいスタート。そして、私にとっても。
○「大人は自分の子供の頃の事を忘れています。この忘れるというのは、子供の心を持っていないという事ですね。最近、一生懸命何かに打ち込んだり、思いきり泣いたり笑ったり、怒ったり、感動したりしましたか。」ロバート・ハリスのラジオ
 自分では、絶対そんな風にはならないと思っていたのに、さっき気づいてしまって哀しいです。自分では「子供心を忘れた大人」にはならないと思っていたのになぁ。今の私は、その心を忘れかけています。先日、中学時代の同級生に会って話をした時に、「家で普段何してるの?」ときかれ、「えっ・。そうだね、ご飯食べて、ちょっと勉強して、雑誌読んで、音楽聴いて、寝てる。」と答えて、はっとしたのです。なんだかつまらない日々を送っているのだなぁと。途中までしかクリアしていないファミコンのカセットの全クリに毎日を費やす方がよっぽど充実していると言えます。
 その反面友達への手紙とかには、勢いのままその時の自分を書きつけていて、その点では一生懸命でいられているのから、まだ救われていると思ってしまいます。皆は、日記−とまではいかないけれど、その辺の紙に自分の感情や考えている事を書きつけたりしないのだそうです。それは驚きだ。私の机の引出しの中には、そういった事を書きつけた紙が何十枚と詰まっているのに。自分の気持ちを言葉に表すのも面倒だと思って(かどうか知らないけれど)、そのままにしておくなんて、それは大人へ向かっている兆候にちがいないと思います。
○「結婚してる?」「時々!」映画の一シーン
 最初聞いた時、何かあっけにとられた。時々ということは、離婚したり、再婚したりもしているわけだから、簡単なセリフだけど、実は奥が深いのかなぁと思いました。
○古「なんか名文ない?」真「ごめん。今、頭がちょっと悪くて・。」
 すばらしい。
○「たまにはこうして、人を寄せ付けない高い台座からひきずりおろされるのはいい薬です。うぬぼれが多少揺らぐのはいい薬です。というのも、このところまた、自分のことだけに夢中になりすぎていましたから。アンネお嬢さんのすることが、いつも正しいとは絶対に言えません! だれにせよ、ほかの人をこれほどまでに悲しませること、それも自分を愛してくれる人に故意にこれほどの悲しみを与えることは、まことにもって卑劣、唾棄すべき行為です!」アンネ・フランク『アンネの日記』
 いつものことながら、彼女の書く日記には驚かされています。はたして私にはこれほどまでに自分を責め、戒めることができるのでしょうか?
○「なんで芸能人がヤクザと食事したっていって大騒ぎするんだ。じゃあヤクザってどういうものなんだ。悪いものなのかどうかはっきりしろって。」『だから私は嫌われる』
 うちの父方の祖母も『おまえ、ピアスしてるようなヤツとつきあうんじゃないぞ』なんて言ってた。そんなことしたら今の半分くらい友が減ってしまうでしょう。なんでピアスがいけないんだ。痛い思いをするのは本人だけで他の人には何の迷惑もかけないじゃないか。優しいヤクザなんかよりもっともっとえげつないことやってる政治家や会社の偉い人なんかはどうだっていうんだ。ああ〜なんだか、だんだんハラがたってきた。
○「だって、やっぱり電車の中で話すの好きじゃない。窓の外の景色がどんどん流れてって、もったいないじゃん。」男の友達
 外を見るのが好きなのは知ってたけど、そういうふうに思っていたとは知らなかった。
○「ひざこぞう」
 漢字で書くと膝小僧。なんで小僧なんだからわかんないけど、膝小僧なんだよね。考えてみると笑っちゃう。そうそう、この前友達とはなしてて、私がざんぶりっていったら、何それってすごい笑われた。これはお風呂に入って、体を洗わないで湯船だけにつかってでること。こうやって説明したら、また何それ、そんな言葉しらないよって笑われた。どうやら、このざんぶりって言葉はどこから生まれてきたんだか知らないけれど、うちだけで使っていた「うちご」だったらしい・。
○「お父さんを嫌いになるのは難しい」チオビタドリンクのCM
 私は昔、弟とけんかをしてすごくお父さんにおこられたこと、今でもよく覚えてる。その時は、なんで私がおこられなきゃいけないのって、すごい悔しい思いをして、お父さんは大嫌い、もう絶対口きかないからって思った。泣いている私に向かって早く顔洗え、もう泣くのはやめろって。自分が私をこんなにしたくせによくそんなこといえるよって。もうその時激しい感情が行ったりきたりした。でも今思えばあれはあれでいい思い出になっている。不思議なくらいにお父さんという存在の良さっていうか本当の意味での男らしさの象徴っていうかけっしていやな思い出じゃないんだよね。そういうのってよく分かんないけど、時の魔法かなって思う。はきり言って、あの時以来そんなおこられ方は一度もされなかった。
○「楽になれるという希望が苦しみに耐える勇気を病人に与える。ちょうどそのとき、彼は足音を耳にしたような気がする。足音は近づき、そして遠ざかる。ドアの下からもれていた朝の光は消えてしまった。今、ガス灯を消したところだ。最後の従業員もいってしまい、こうして一晩中薬もなしに苦しみつづけなければならないのだ。」プルースト『スワンの 家の方へ』
 子供の頃病気ですっと寝ていた時、疲れないから眠れなくて、夜中によくこういう思いをした。わかってることでも他人が改めて書くと感心する。でも男の書く文は簡潔に書いてあってよい。クリスティはなぜ推理小説の巨匠かわからない。よんだことがあるけど情景描写ばっかりで面白くない。サガンはほどほどで面白い。プルーストはさすが、サガンを尊敬するだけあっておもしろい。
○「不条理の海、混沌の林、己の卑小の自覚から、人格は生まれる。人間とは人間になることである。」カール・ヤスパース
 読めば読むほど奥が深くて不思議な言葉だと思う。「人間とは?」ということを考えると自分の存在が何なのかもわからなくなって、こわくなることがあるけど、「人間になること」とはどういうことなんだろうか?

3-2「5分間スピーチ」  目次へ

内容) 音声言語の指導。
 T あらかじめ内容のプリントを提出させ、当番生徒と検討した。
 U 生徒は自宅でリハーサルをし、その際にテープに録音し、声の様子など検討させた。
 V 本番ではテープに吹き込み、聞いている側は評価用紙に記入させた。
 W 聞いている側は評価用紙を発表者に渡し、スピーチした生徒自身が集計し、自分の感想など    もまとめて提出させた。また、録音を聞き直させ、スピーチ時間を計らせた。
今回は事前準備があったが、学年によっては突然スピーチさせる方法も考えられる。
課題プリント)

3-3「くちの体操」  目次へ

内容) 音声言語の指導。塩原氏の著書(■7.参照)を引用したが、毎時間3分ほどで訓練をし、その後5分間スピーチを行った。基本編より文章を音読する方のが効果的であった。声の大きさや抑揚などを一斉音読や数名のグループ音読、個人の音読などを場に応じて取り入れた。

3-4「文章音読」  目次へ 

内容)音声言語の指導。国語の資料集・便覧は古典、近代作品の文章の一部が掲載されている。特に中学生向けの資料集は主要な作品の一部がルビつきで載せてあるので、一時間に2作品ずつ音読した。まず範読し、一斉音読し、数名に複数で音読させた。これでいままで知らなかった作品にも興味を持つ機会を与えようとしたのである。

3-5「MCハマーのフィーリング−比較研究−」  目次へ

内容)「うれしい」と「楽しい」の定義を学習した後、各自が進んで比較調査させることにした。この延長が「あなたも経営者」である。今回は二つのものを任意に選んで、詳しく観察・調査して比較し、レポートにまとめることをする。その際にグラフや図を用いて簡潔にわかりやすくするように指示した。また、関係企業や官庁などには電話で調査するようにさせた。多くの企業では学校の宿題程度では答えてくれるばすもなく、一方的に電話を切られることも数多くあったという。この比較研究はおもいのほか完成度が高いものであった。中3で実施したのだが、中学生ならではの緻密なものが多かった。この学年は図、グラフを用いたレポートを3年連続課せられた。
中3 「比較研究」国語表現
高1 「夏休み課題レポート−職種と職業内容、生活設計−」学年宿題
高2 「あなたも経営者」国語表現(T類のみ)
課題プリント)
生徒作例)

3-6「実用書式」  目次へ

内容)実用の書式については、日常使うことのない生徒にとって難しいもであった。公用文の書き方を参考にし、実際に欠席届などについては、通常生徒手帳を使用していたが、この授業の期間は自ら便せんに書いて、保護者の署名・捺印をもらうことにした。また、物を借りる場合や、クラス費用の徴収のお知らせなどについても生徒に書かせて添削させた。実際に多く書かせることが必要である。
課題プリント)
生徒作例)(省略)

3-7「桜の花びら−観察力と描写力−」  目次へ

内容)ちょうど桜の時期にあたったので、観察力と描写力をつけるために、桜の花びらを一つ拾わせ、言語でそれを描写することの可能性について認識させた。自分の書いた表現について、友達はどう受けとめるかを中心に作業した。
課題プリント)
生徒作例)

3-8「ある一日−ノンフィクションの表現−」  目次へ

内容)「桜の花びら」と類似するが、自分の一日の行動について詳しく描写してみることにした。自分の行動をいかに記憶しているかは難しいものである。絵画でも観察力をつけるために、あえてトルソーを隣の部屋に置き、よく観察してから元の部屋でデッサンをするという訓練方法がある。おなじく、自分の体験をくわしく書くことで、描写の可能性というものを認識させたかった。
課題プリント)
生徒作例)

3-9「黒板を爪でひっかく−表現の可能性−」  目次へ

内容)「桜の花びら」と同じく表現の可能性について
 T「身の毛もよだつ表現」
 U「心あたたまる表現」
と可能性について検討させた。実際に「痛い」ということを体験しなくても、言葉だけで「痛み」を共有できることが表現の可能性、仮想現実(バーチャルリアリティー)につながるものと考え、現実の疑似体験ができるような表現を得ることができれば、文学などを読むことの意義についても触れることが可能であると考えたからである。
課題プリント)
生徒作例)

3-10「私は怒っている−意見−」  目次へ

内容)人は怒っているときに雄弁になることがある。そこで、怒っていることについて書かせて、感情的な面の自分を観察し、何に対して怒っているのか、それに対してどのような言葉を与えるのかを検討させた。感情的な言葉から意見を導くことを目的としたものである。これは、相手を説得させる要件である。生徒の例を発表しつつ、それを聞いて同情と納得と両方の面から検討させた。
課題プリント)
生徒作例)

3-11「お願い!いや!−依頼・ことわり・説得−」  目次へ

内容)相手を言葉で説得させる論理力をつけることを目標とした。どうしてもたのまなくてはいけない状況でどう頼むかである。また、ことわるにはどのようにしてことわるか、論理的にまた、心情も含めて(これも論理と言えるが)説得できるような表現を考えるのである。この時点の指導ではまだセールス関係の文献を集めていなかったので、セールスとの関係を取り入ることも今後検討してみたい。
課題プリント)
生徒作例)

3-12「ラブストーリー−ドラマのシナリオ−」  目次へ

内容)中3の最後の授業としてテープでのドラマを作らせた。ちょうどTVで恋愛ドラマが多く流されていたので、恋愛を扱った。特に中学生が考える恋愛観をどう表現するか、検討することが目的であった。グループに分けて、クラスで審査会を開いて、最後にクラスの一番の得点を得たドラマを学年全員を集めて発表会を開いた。録音機材が不十分であったので、音質はよくなかったが、効果音など巧みに使用していた。本校ではビデオ機材が不十分なので活用できないが、将来はビデオによる表現も取り入れたいと思っている。
課題プリント)
生徒作例)

3-13「表現発表会」  目次へ

内容) 総合的な表現力育成として、高2の一年の終わりに表現発表会を行った。個人、グループでを問わずに2時間を使ったが、よく考えていて、余興に近いものではあったが、よく練習していた。内容は漫才や劇、スピーチなど多岐にわたり、充実した会であった。発表にあたってはチラシを作成させて、「書く」表現についても検討させた。
課題プリント)
生徒作例)

3-14「思い出は美しすぎて−三年間の思い出の詩作」  目次へ

内容)中3の卒業式で群読する詩を作らせた。
T さまざまな行事から、そこから自分の思いで書いておく。
U グループに分けて、個人の表現をあつめて、作る。
V クラスで一つにまとめて、全員で検討する。
W 各クラスの代表委員が集まり、一つに集約する。そして、各クラスに持ち帰って検討する。
以上の方法から卒業式の詩が出来、誰が読むかについても各委員にまかせた。
課題プリント)
生徒作例)

■5.実践例−5-4.語彙  目次へ
4-1「漢字テスト」  目次へ

内容)中1から中3までは毎週漢字テストと百人一首テストを行った。漢字のテキストは京都書房『常用漢字の基礎』『常用漢字の完成』を使用した。このテキストは見開きで40字分なので、一日10字で4時間、5時間目にテストが実施でき、ちょうど一週間のスケジュールと一致した。今回の中3国語表現では週1時間なので、2週間に1回テストを行うこととし、授業では文字指導はせずノート点検のみとした。生徒は誤って字形を覚えている場合があるので、ノート点検だけでも十分指導はできた。
T ノートに漢字を5回書かせ、語彙の意味も調べさせておく。
U 授業で一日10字の語彙の読みと意味を生徒に発表させる。この時にトメ、ハネなどのポイント1を指示する。
V 40字分になったところで、ノートを提出させて、間違った字をかいていないか点検し返却する。
W 語彙の確認テスト(1問2点、50問)を行う。この際に80〜90点で基準を切り、それ以下の者に再テストを実施した。
X 優秀者は掲示して表彰し、年間の最高得点者には賞状を与えた。
Y テスト問題は例文を身近なものに変えたり、物語にしたり工夫をした。また、模範解答の氏名らんに作家名を書き入れ、その説明を欄外に示した。

4-2「語彙テスト」  目次へ

内容) 高2で毎時間実施した。あらかじめ語彙を指定しておき、10問の意味を問うテスト(択一式)を行った。語彙は現代によくつかわれるものを適宜参考書などを引用しつつ選定した。特に、今よく使われる外来語については、誤答率が高かった。
例) 語彙 口角泡をとばす 巧言令色 嚆矢 沽券 虎視眈々 鼓吹 忽然 渾然 サンクチュアリー

4-3「読みを知る」
4-4「ことば遊び−漢字の穴埋め−」  目次へ

内容)言葉の読みを知るために読みを調べさせた。また、言葉遊びを導入し、漢字の穴埋めなどの息抜きを入れた。

4-5「うれしいと楽しい−定義−」  目次へ

内容)ことばの使い分けについて、分類し、分析して使用法を考えさせた。これにより、言葉の意味や定義の問題にもふれることができた。

■6.外部コンクール応募  目次へ

 生徒は自分の作品が評価されることを望んでいる。また、友達が評価されるとそのクラス全体に雰囲気が広がる。そこで、高2のクラスでは外部コンクールに積極的に応募させた。いくつかを必修応募とし、残りを任意応募とした。必修応募は授業時間に図書館などでの調査に充てて、任意は自宅で行うものとした。入賞者は全校集会で表彰し、作品は学園誌に掲載した。

主なコンクールは以下の通り。
[1995年度実施]
5/15「高校生エッセイコンテスト」国際協力事業団 048-834-7770
6/10「中野重治記念全国高校生詩のコンクール」福井県丸亀町 0776-66-3000
6/10「全国中学生・高校生作文コンクール」大修館 03-3294-2221
7/25「永井隆平和賞」島根県三刀屋町 0854-45-2111
8/5「小梅童話賞」梅花女子大学 0726-43-6221
9/1「高校生のための作文コンクール」中京女子大学 0562-46-1218
9/6「原子力の日記念作文・論文募集」日本原子力文化振興財団 03-3504-1381
9/8「くらしの安全・くらしの安心作文コンクール」日本損害保険協会 03-3255-1214
9/11「文の甲子園」文藝春秋 03-3265-1211
9/11「小泉信三賞コンテスト」慶應義塾大学 
9/20「学芸科学コンクール」旺文社
9/22「全国高校生文章表現コンクール」東京スクールオブビジネス 03-3370-2222 (1996をもって終了)
9/30「イトーヨーカドー懸賞作文募集」イトーヨーカドー 03-3459-2176
9/30「省エネルギー小論文コンクール」省エネルギーセンター 03-5543-3013
9/30「桃山学院大学懸賞論文」桃山学院大学 0725-54-3131
9/30「山川登美子短歌賞」梅花女子大学 0726-43-6221
10/14「岐阜経済大学作文コンクール」岐阜経済大学(大垣市)
10/31「夢の旅作文コンクール」毎日新聞社 03-3212-2272
11/25「現代百人一首」東洋大学 03-3945-7571
12/8「学生広告論文電通賞」電通 03-5551-5132
[1994年度実施:今年度の予定は未調査]
5/ 「交通安全の提言」交通安全協会
9/10「山梨英和文芸賞」山梨英和短期大学 0552-52-7890
9/25「私の通学路」大東文化大学
9/30「高校生輝きコンクール」産能大学 0463-92-2211
9/30「グローバルマインド賞」大阪国際大学 0720-85-1616
10/1「高校生短歌募集」江戸川女子短期大学 0471-52-0661
10/14「かけがいのない地球を大切にコンクール」世界自然保護基金日本委員会 03-5449-3128
11/3O「高校生文化大賞」産経新聞社 03-3275-8678

■7.今回の実践で参考にした書籍  目次へ

 多くの実践授業報告や文章表現技法についての資料が刊行されているが、それらは省いて、発想・思考・表現・語彙の指導に役立つ主な資料を紹介する。○は今回の実践でよく参考にしたもの。

o発 想
○星野 匡 『発想法入門』日経文庫,89
 §すぐにでも授業で使える内容が豊富にあり、発想についての方法もわかりやすく解説してある。
○多湖 輝 『発想力』ごま書房,85
 §発想力の基本的な考え方や発想方法も書かれていてわかりやすい。
○多湖 輝 『頭の体操1〜16』光文社,66-94
 §特に1、2巻は発想力の理論もあって必読である。授業には最も有効なもの。
○多湖 輝 『頭の体操スペシャル』光文社,95
○西岡 文彦 『図解発想法』JICC出版局,91
 §図解の歴史や方法をまとめたもの。
○石井 慎二 『発想トレーニングの技術(別冊宝島37)』JICC出版局,83
 §発想や創造力育成の参考文献リストが充実している。
○セレブリアコフ 『IQメンサパズル』東京図書,82
○バーバラ・ミント 『考える技術・書く技術』ダイヤモンド社,95
 §ピラミッド原則による考え方の理論書。
○キャロル・キンゼイ・ゴーマン『[基本の基本]発想力』日本能率協会マネージメントセンター,91
○ムンツァート 『おもしろIQテスト』東京図書,82
○ムンツァート 『右脳左脳のIQテスト』東京図書,82
 トム・ウ゛ージェク 『頭脳を鍛えるメンタル・アスレチック』TBSブリタニカ,90
 豊沢 豊雄 『一日一案発想練習365日』実業之日本社,81
 川喜田 二郎  『続発想法』中公新書,70
 A.ウィンター&R.ウィンター 『能力トレーニング』東京図書,89
 ブザン 『頭がよくなる本』東京図書,82
 樺 旦純 『右脳パズル』主婦と生活社,82
 現代能力検定協会『なぞかけ用頭脳クイズ』青春出版社,92
 鈴木 義一郎 『1を調べて10を知る科学』講談社ブルーバックス,92
 柳澤 桂子 『脳が考える脳』講談社ブルーバックス,95
 茂呂 雄二 『なぜ人は書くのか』東京大学出版会,88
 §認知科学からの究明した書。

o思 考
○高橋 誠 『問題解決手法の知識』日経文庫,84
 §問題解決と思考力は一致するものであり、その方法を展開したものとしてすぐれている。
○星野 匡 『企画の立て方』日経文庫,87
 §企画立案についてわかりやすくまとめたもの。生徒のレポートに活用できる。
○小野田 博一 『頭脳がめざめる 挑戦!論理パズル』日本実業出版社,94
○小野田 博一 『新作論理パズル77』講談社ブルーバックス,95
○小野田 博一  『論理パズル101』講談社ブルーバックス,94
 §以上3冊は論理力育成のために、とても役に立った本。すぐに授業に使える。
○笹山 朝生 『パズルで挑戦!IQ150への道』講談社ブルーバックス,94
○安野 光雅 『算私語録1〜3』朝日文庫,84-
 §算数だけでなく、論理にも役に立つものが多い。
○山下 正男 『論理的に考えること』岩波ジュニア新書,85
○小林康夫・船曳建夫『知の技法』東京大学出版会,94
 §後半が授業に使える。
○小林康夫・船曳建夫『知の論理』東京大学出版会,95
○野崎 昭弘 『詭弁論理学』中公新書,76
○梅田卓夫・清水良典・服部左右一・松川由博『新作文宣言』ちまくライブラリー,89
 §愛知県小牧工業高校の先生方の実践報告。
 中尾 佐助 『分類の発想』 朝日選書 90
 横内 孝司 『推理ロジック』日本文芸社,94
 高橋 憲行 『図解でみせる法』オーエス出版,93
 中村 秀吉 『パラドックス』中公新書,72
 板坂 元 『日本人の論理構造』講談社現代新書,71
 板坂 元 『続 考える技術・書く技術』講談社現代新書,77
 板坂 元 『考える技術・書く技術』講談社現代新書,73
 野矢 茂樹 『論理学』東京大学出版会,94
 長戸 勇人 『クイズは創造力(理論編・問題集編・応用編)』情報センター出版局,90-91
 §理論編には前振りの定型について書かれていて、じつは論理的な文章の解析に役立つ。
 永田 喜彰 『永田喜彰のクイズ全書』情報センター出版局,92
 立命館大学クイズソサイエティー『RUQSのクイズ全書』情報センター出版局,93
 水津 康夫 『水津康夫のクイズ全書』情報センター出版局,92
 能勢 一幸 『能勢一幸のクイズ全書T・U』情報センター出版局,93-94
○パキラハウス 『おしゃべり用心理ゲーム』TBSブリタニカ,88
 §ちょっとした息抜きによい。
○パキラハウス 『おしゃべり用心理ゲーム つづきの巻』TBSブリタニカ,89
 パキラハウス 『おしゃべり用心理ゲーム こわいの巻』TBSブリタニカ,90
○トマホーク 『アメリカ横断ウルトラクイズ1〜15』日本テレビ,77-
○チップトップ 『全国高等学校クイズ選手権1−10』日本テレビ,80-
○TBS史上最強のクイズ王決定戦『史上最強のクイズ王決定戦公式問題集1−3』情報センター出版局,92-93
 7大学クイズ研究会 『挑戦クイズ王への道 王道編』池田書店,94
 7大学クイズ研究会 『挑戦クイズ王への道』池田書店,93

o表 現
○永山 嘉昭 『説得できる文章表現200の鉄則』日経BP社,92
 §文章表現の具体的な鉄則として簡潔でわかりやすく、すぐに授業に導入できる本。
○富士ゼロックスD推進グループ/コアデザイン制作部『ビジネスドキュメントの演出技法-T チャート化とレイアウト』日本経済新聞社,91
 §図とグラフを有効に使う方法を示したわかりやすい書。
○野口 智雄 『ビジュアル マーケティングの基本』日経文庫,94
 §調査やアンケートなどに役に立つ、文のレイアウトもよい。
○出原栄一・吉田武夫・渥美浩章『図の体系』日科技連,86
 §図を体系化した唯一の本。図に関するすべてはこの本に集約される。
  富士ゼロックスドキュメントマネージメント推進室『プレゼンテーションの説得技法』日本経済新聞社,89
 §プレゼンテーションの基本的解説をしたもの。
 和田 創 『ビジネス企画書の作成技法』日経新聞社,94
 忰田 進一 『企画書練習ノート』明日香出版社,93
 忰田 進一 『企画書を書くための事典』明日香出版社,90
○忰田 進一 『図解で表現するための事典』明日香出版社,91
 §図解をわかりやすくした本
○PHP研究所 『ビジネス文書ハンドブック』PHP研究所,88
 §話し方や態度など表現には有効なものもある。
 樺島 忠夫 『文章構成法』講談社現代新書,80
○言語技術の会 『実践 言語技術入門』朝日選書,90
 §学習院で木下・佐藤氏が進めている言語技術をまとめた本。
 佐藤 喜久雄 『国際化・情報化社会へ向けての表現技術入門1〜3』創拓社,94
 §言語技術の会が中心となって作成したワークブック。
 本多 勝一 『日本語の作文技術』朝日文庫,82
 本多 勝一 『実践 日本語の作文技術』朝日文庫,94
○木下 是雄 『レポートの組み立て方』ちくまライブラリー,90
○木下 是雄 『理科系の作文技術』中公新書,81
 土屋 治子 『秘書入門』日経新書,90
○塩原 慎次朗 『声を出して読む日本語の本』創拓社,87
 §発声練習にはとてもよいまとまった本。テープもある。
○高橋 誠 『会議の進め方』日経新書,87
 §会議について一番詳しい本。これをもとにすれば、模範会議も簡単に開催できる。
○加藤 和昭 『セールスの技術!』PHP研究所,94
 中村 卯一郎 『接客サービスこうすればいい』ダイヤモンド社,94
 パキラハウス 『ちょっとしたものの言い方』講談社,90
 §表現の具体的な方法として役に立つ。
 現代情報工学研究会『ちょっと考えた電話の話し方』講談社,94

o語 彙
○広野 昭甫 『学習意欲を高めることば遊びの指導』教育出版,82
○広野 昭甫 『語彙を豊かにする 続・ことば遊びの指導』教育出版,89
○誤字誤植研究会 『漢字を読む』新水社,90
 §語彙指導ではとても役に立つ本。
○川口 明子 『一冊で100分野の難読語を知る』友人社,89
 §難読語のオンパレードで、語彙指導ににも便利である。
○山本 昌弘 『漢字遊び』講談社現代新書,85
○織田 正吉 『ことば遊びコレクション』講談社現代新書,86
○ことばと教育の会『しなやかな発想を育てる 教室のことば遊び』教育出版,84
 §授業にすぐ使えるクイズ集。どちらかというと息抜きに使える。
 大類 雅敏 『句読点おもしろ事典』一光社,88
○塚本 邦雄 『ことば遊び悦覧記』河出書房新社,80
 §ことば遊びの歴史などくわしい。

■8.補足  目次へ

学習指導要領との関連について述べる。

1 指導要領「目標」との関連
小 「国語を正確に理解し適切に表現する能力を育てるとともに、」
中 「国語を正確に理解し適切に表現する能力を高めるとともに、」
高 「国語を的確に理解し適切に表現する能力を身に付けさせるとともに、」

小 「思考力想像力及び言語感覚を養い、」
中 「思考力想像力を養い言語感覚を豊かにし、」
高 「思考力を伸ばし心情を豊かにし、言語感覚を磨き」

小 「国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる。」
中 「国語に対する認識を深め国語を尊重する態度を育てる。」
高 「言語文化に対する関心を深め、国語を尊重してその向上を図る態度を育てる。」

 表現する能力に必要なのは、思考力発想力に語彙能力が備わり、そして、発表の場を何度も経験しながら試行錯誤して改良し、身につくものである。
2 学習指導要領「国語表現」
1.目 標
国語で適切にまた効果的に表現する能力を高めるとともに、思考力を伸ばし、言語感覚を磨き、進んで表現することによって生活を充実させる態度を育てる。
2.内 容
次の事項について説明する。
ア 適切な話題や題材を取り上げ、それについて情報を収集、整理し、自分の考えを深めて、主題や論旨を明確にすること。
イ 観察、調査などに基づいて、事実、状況などを正確に説明したり記録や報告にまとめたりすること。
ウ 構想に従って材料を整理し、意見、主張などを筋道を立てて話したり、書いたりすること。
エ 対象を的確にとらえ表現を工夫して、感想、感動などが生き生きと伝わるように話したり書いたりすること。
オ 相手や目的に応じた形式や文体を整えて、通信、伝達などの文章を書くこと。
カ 優れた表現について主題、要旨、構成、修辞などを吟味し、自分の表現や推敲に役立てること。
3.内容の取り扱い
` 作文と話し方の指導は、相互の関連を図りながら効果的に行うようにし、話し方の指導には生徒の実態に応じて適切な授業時数を配当するようにする。
a 話し方の指導については、様々な目的や場に応じた話し方を身に付けさせるようにするとともに、発表、対話、討議などを適宜取り入れるようにする。
b 生徒の文章力を伸ばすため、文章を書く機会を多く設けるとともに、文章研究を十分に活用するようにする。
c 教材は、書くこと話すことの学習活動に役立つもので、特に論理的思考力を伸ばすのに役立つものを取り上げるようにする。

■9.終わりに  目次へ

今回の試みは同一学年を中3、高2と追って行ったものである。まだまだ、その場しのぎで十分に教材吟味できていないところ
もある。中3の実践は全時間テープに録音しておいたので、聞き直して反省点などをふまえて新しい授業展開を考えたい。

 発想・思考・表現・語彙とあるがすべては表現に集約する。かけがけえのない今この時の自分をいかに表現するか。これが永遠
のテーマであるとも言える。                                        

以 上

注*1 1994年日本経済新聞社大阪本社広告局調査(○は順位)
   文系:2理解力(16.1%)、6創造力(8.6%)、8発想力(4.1%)、J表現力(1.9%)
    理系:1創造力(23.4%)、2理解力(18.8%)、3発想力(12.7%)、J表現力(1.0%)

黒川 孝広 (C)Kurokawa Takahiro 1995,1998


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